著者 森田靖郎 関西学院大学経済学部卒 ノンフィクション作家。蛇頭、密航、来日中国 人の犯罪に詳しく、該方面の著書が多い。本書もその一つ。2004 中公新書 クラレ。 時節柄、あまり中国を刺激してはいけないような気もするが、時節柄だからこそ、この本を 手に取ったんだろう。 まず、著者は、詳しい数字を挙げて、来日中国人の犯罪の実態を明らかにする。 それによれば、来日外国人の犯罪のうち60%強が中国人に占められている。続いて、トル コ(14.5%)、ブラジル(10.4%)、韓国(6.6%)・・・中国人が断トツである。 「住宅街におけるピッキング犯罪をはじめ、凶悪な殺人事件に麻薬、さらに売春そして誘拐 など、来日中国人の犯罪は日本社会を震撼させている」とまで著者は言い切る。 次に、何故、中国人の犯罪が、こんなに多いのか?中国本土の社会の変化が、その原因 だとして、著者はフィールドワークを通じて、その経緯を論証する。来日中国人を数多く送り 出している福建省各地を歩き回り知見を得ている。「強盗村」というのもあるらしい。 工頭(コントウ)という手配師がいて、彼の仕事を「三包(サンパオ)」という。不法入国の手 引き、仕事の斡旋、住まいの世話、がそれである。今の日本社会では、非合法の潜り業者 だが、来日中国人は工頭の世話になって、日本人が嫌う3K職場で働いている。 よく聞く蛇頭とは? 密航者のことを、どんな隙間からも越境してくるところから人蛇(ヤン セ)というが、その人蛇を案内するリーダーを蛇頭(スネークヘッド)というらしい。 勧誘蛇頭:地元で密航者を誘う。 付き添い蛇頭:密航者に付き添って目的地まで運ぶ。 出迎え蛇頭:目的地で密航者を受け入れる。 この蛇頭システムが、日本社会を来日外国人犯罪社会へと突き落とす元凶である。 つまり、蛇頭が動かす”人間密輸”が犯罪の温床になっているからだ。 100,65,6 という数字がある。日本の労賃を100とした場合、アメリカは65,中国は6 という割合になるという。同じ仕事をして15倍強になるなら、当然日本に来たがる訳だ。しか し合法的に来日するのは不可能に近い。そこで工頭の世話になる訳だ。 ただ、蛇頭に払う金額は200万円ほど。約30年分の年収にあたるという。勿論、これを一発で払える者は皆無。金額の大部分は借金となり彼らを縛る。 日本に根を張る中国の黒社会は犯罪をビジネスとしている。ピッキングやクレジットカード偽 造、ATM荒らしなど。しかし黒社会の収入で最大のものは、蛇頭ビジネスと地下銀行である。 蛇頭は人を運ぶことで斡旋費用を稼ぎ、地下銀行はカネを運ぶことで手数料や為替差益を 得る。 90年代初め、中国から出稼ぎ密航者を運ぶ”蛇頭”が登場。 90年代半ば、蛇頭が運んだ不法滞在者達に仕事を斡旋する工頭が出現。 2000年になると、犯罪者達を運ぶ車頭が、日本人の知らない中国人犯罪ネットワークを仕 切る。 著者は、中国人犯罪を抑止するため以下を提言する。 1 外国人労働者を明確な条件で雇用する。 2 身分を保証し、仕事、住まいなどきちんと監督し日陰者にならぬようにする。 3 税金も払い、社会保険にも加入させ、年金も負担することで日本社会の一員たる自覚を 持たせる。 4 東京都(慎太郎さん?)や政府要人達のタカビな中国批判は感情に走りすぎていて、中 国人の”反日感情”を煽るのみ。これを止めてもらう。 時節柄、近い国々とのトラブルを減らし、近所同士仲良くおつきあいしたいものです。 乱読状況 : 歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」乱読始め。
by tsc-edotyuu
| 2005-04-14 15:05
| 乱読
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