さて本書だが、やはり樋口流の軽妙な、洒脱な、優しい文章でツルッと読めた。 笹尾礼司、21才、大学生、歴史学科3年在学中。5才年上のイラストレーター香織と恋人 としてつき合っている。笹尾家は資産家で、母子家庭。母は「ケーキ研究家」と称して、ケ ーキ教室、出張教授などをしている。ノンビリと、ユッタリとした母親で礼司を可愛がって いる。 ある日、学校から帰宅すると、食卓がパーテイーのように飾られ、母は「うっかり47才まで生きてしまったシンデレラ」のような白いウエデiングドレスみたいなワンピースを着ている。 母によれば、お祝いというよりケジメだという。未知の人から電話が入り、礼司の父が死んだ というのだ。15年前に家を出た父の記憶は全くない礼司、家のアルバムにも父の写真は無く 顔も覚えていない。昆虫学者で、あまり家に居ることもなかったと母は言う。 その父が礼司に遺した物があるので取りに来て欲しいというのが電話の内容だったので、 母はその役目を礼司に押しつけようという訳だ。 ここから、いわば礼司のルーツ探しみたいなものが始まる。 訪ねて行った家に居た全く喋らない謎の超美少女、怪物みたいなその母親、父の学者仲間、 父を知る女流洋画家・・・父の姿がドンドン見えてきて、トンデモナイことに礼司には、姉も妹 もいることが判ってくる。 恋人香織が描いた絵が超美少女になんとなく似ているのは何故? 夏の口紅を塗るのは誰? 殺人もないし悪人も出てこない、ドキドキ、ハラハラもないけれど、これはミステリーである。 樋口有介のユーモラスな文体は愛すべきものである。続けて樋口を読みたいと思った。 乱読状況 : 谷 甲州「サージャント・グルカ」読み中。
by tsc-edotyuu
| 2005-04-04 11:49
| 乱読
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