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モラヴィア「金曜日の別荘」 再掲 

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訳者によれば、本書は、アルベルト・モラヴィア最晩年の作品中の一冊という。
ご存じの通り、モラヴィアは22才で「無関心な人びと」を発表し、一躍イタリア文壇のスター
になった作家である。主要長編は以下の通りである。 潰えた野心 めざめ ローマの女
孤独な青年 軽蔑 二人の女 倦怠 関心 わたしとあいつ 深層生活 ローマへの旅
  etc  他に十冊余の短編集、紀行文集、戯曲、評論集がある。
表紙裏等の顔写真を見たことがある方は、お分かりのように、大きな恐い目をした爺さんで
マフィアのドンと言われれば、そうかと思うような容貌をしている。ローマ物語を読むと、とて
もこんな小説を書くような爺さんに見えない。

さて、本書であるが、三つの中篇と十三の短篇が収められており、それぞれの男女の関わり
が、彼らの愛と性が描かれている。そもそもモラヴィアの作品の根底に常に一貫してあるの
は、人間とは何か、生きることとはどういうことかを問おうとする視点だったという。 そして
モラヴィアの場合、その軸となったのは性であったと言えるだろう。モラヴィアの目には、性
の領域は、まだその究め方が不十分と映ったらしい。モラヴィア文学の根底には、常に性が
不動のものとして位置づけられる、と考えられている。

金曜日の別荘」ステファノとアリーナは30才前後の若い夫婦。海辺のリゾートに別荘を借り
           ている。妻のアリーナは、ここから30km離れた所の別荘にいる夫公認の
           愛人と、金曜から日曜を共に過ごす。月曜から木曜までは夫と過ごすの
           だ。ステファノはアリーナを愛しているが欲望は全然覚えない。
           或る日曜の夜、アリーナは体に傷を付けて帰ってきた。目はキラキラと輝
           き興奮しきっている。彼女と愛人に何が起きたのか?そして彼ら三人の間
           の関係は、どんな変化、進展を遂げるのか?

戸口の皿」18才のジャンマリーア(♂)は「ドラマ-悲劇」を書くために高原のホテルに滞在
        している。そこで彼は、実に妖艶な中年女性マグダと知り合う。彼女は彼が気に
        入り誘惑しようとする。そこにピエトロボンという大鼻のブス女が現れ、マグダの
        夫から雇われ彼女を監視しているという。そしてマグダは色情狂とでも言うべき
        女で、ホテルのフロアボーイ、ポーター、バーテンとも関係したといって警告す
        る。マグダの情事を報告された夫は、裏切られるほど妻を一層愛するという性
        情の男である。また大鼻女は、実はレスビアンでマグダを監視しながら彼女に
        欲情を覚えチャンスを狙っている。戸口の皿というのはルームサービスでとった
        料理の皿のこと。空になっていたり、そのままだったりしてドアの所に置いてあ
        る。何故、皿が空だったり、そのままだったりするのか?大鼻女は思いを遂げる
        のか?ジャンマリーアは誘惑に応じるのか?ホテルのボーイ達は?夫は?

高速道路で」雑誌にも顔写真が載る高名な建築家が高速道路入り口でヒッチハイカーを拾
         うが、その女は妊娠していて彼を個人的に知っているという・・・

考えよ!」アホな法令制定者が「自然災害発生時、公団は復興を考える」という条文を作っ
       たため、公団総裁は「考えて」国家からの基金を自分たちのためにだけ使ってい
       た。どこかの社会保険庁を想起させますね。  ところが・・・

やぶ睨みの女」やぶ睨みの女を秘書にした大成功者は・・・

あたしはこまで、名前はアリス

どんな蝶?」

天使が毎日真実を告げる」 愛人とのことを毎日告げる妻。

金のように重いヴィーナス」もう一年以上もアレをしていない夫婦。妻の着替えを見て、そ
そられた夫、愛の営みをしてしまうが、妻が、金のように重いヴィーナスだったことを知るが・・・
蜃気楼」 自家用セスナも持っている他の男を妻は・・・

キリンと妻」 キリンを妻と間違えて撃ってしまう・・・

扉窓は窓ではない」 扉窓から妻が他の男と・・・

不貞の妻との暮らし方

嘘か、まことか」 妻が言った。「私、あなたを裏切ったの、相手はマルコなの。」

チェス・プレイヤー」 チェスの指し方を思い浮かべながら妻のモイーラと、やりとりするが、
              最後に指し違え、妻は半白の髪の男と消えてしまった・・・

ラテイーナ・エクスプレス」    何故か、いずれも妻が愛人を作っている!

短篇の名手、モラヴィアらしい作品揃いである。



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モラヴィア「金曜日の別荘」 再掲 _c0039999_20351588.jpgmy書棚にあったモラヴィアの作品



  


  
by tsc-edotyuu | 2005-03-30 20:28 | 乱読
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