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ソン・ヒョスン「ソウルへの道」 再掲

 例によって「あとがき」によれば、本書、宋孝順(ソン・ヒョスン)著「ソウルへの道」は、韓国で1982年、刊行されたが、まもなく発禁処分にされた。世に出たうち何冊かが日本に持ち込まれ、本書の原本となったという。 
 サブタイトルは、-韓国女子労働者の現場手記-となっている。
実は、大分前にgetしてあったのだが、何か辛気くさそうなので積んで置いたところ、先日、
「隣の国の女たち」で取り上げられていたので、手に取った次第。

 読み出すと、成る程、辛気くさい。きょうの夕方、「おしん」がアフガンのTVに登場した、というニュースを見たけれど、おしんなんかメじゃないほど悲惨な暮らしぶりである。著者は全羅北道の一寒村に生まれたが、生家は村一番の貧乏。中学にも行かれなくて奉公に出される。最初は中国人経営の雑貨卸商。我慢出来ずに他に移る。沐浴場(銭湯)などいくつかの職場とも言えない職場を経て、ソウルの××化学に女工として就職する。(この会社が、どうもロンパスの韓国法人くさい。)就職出来たはいいけれど、ひどい扱いを受け、そのひどさが綿々と綴られる。そのルポルタージュが本書の根幹となっている。
 1960年代中盤以降、朴政権が強権の下に推進してきた、外国資本導入による、所謂高度成長政策、輸出依存政策の歪みが、労働者、農民に集中された。労働者の権利などあってなきがごとし。特に女子など牛馬の扱いである。一日工場で働いた給金が冷麺一杯分というのだから。まさに労働者の搾取である。日々の様子が詳しく語られる。
 そんな著者が、産業宣教会という教会を知り、キリスト者として、労働者として目覚め、活動を始めるのだが、会社側の弾圧は凄まじいものがあり、これでもか、これでもかと執拗に著者や仲間を圧迫する。「ここまでやるか」というほど、ありとあらゆるやり方で彼女達を潰しにかかる有様が、生々しく描かれる。
 結局、彼女達は敗れ解雇されるに至るのだが、日本の「女工哀史」とは全く異なる世界なのが読みとられる。このトンデモナイ悲惨、想像を絶する困苦の中にも失われない明るさはどこから来るのか? 抑圧者への、あくまでしなやかで、あくまで天を指す強さは、どこから生まれるのか?

 今は、韓国も調子が悪いようだが、漢江の奇跡、を達成した裏には、こういう人達が居たのだ。
ソン・ヒョスン「ソウルへの道」 再掲_c0039999_20285541.jpg

乱読状況 : 神野淳一「ルーン・ブレーダー!3」車中にて読み始める。
by tsc-edotyuu | 2005-03-13 20:34 | ハングル
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